2017年11月23日

「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」の信託報酬が引き下げ―恐るべきシューターの登場



三菱UFJ国際投信の超低コストインデックスファンドシリーズ「eMAXIS Slim」の一つである「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」の信託報酬が2017年12月13日から引き下げられます。引き下げ後の信託報酬は0.19%(税抜)となります。

業界最低水準の運用コストをめざす『eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)』信託報酬率の引き下げを実施(三菱UFJ国際投信)

一瞬、なにかの間違いではないかと我が目を疑いました。それほど驚愕の低コストです。運用コストがかさみやすい新興国株式に投資するインデックスファンドで、まさかこれほどの超低コストファンドが登場するとは驚きです。同時に「eMAXIS Slim」が掲げる「他社類似 ファンドの運用コストに注意を払い、業界最低水準の運用コストをめざす」というコンセプトの破壊力をまざまざと見せつけられました。まさに恐るべきシューターの登場です。

「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」は、11月10日に信託報酬を0.339%に引き下げたばかりですが、そこからさらに大幅な引き下げとなり、ついに0.2%を下回る水準の信託報酬となりました。新興国株式インデックスファンドと言えば、かつては1%近い信託報酬が一般的だっただけに、驚くべき低コストの実現となります。

今回の動きは、明らかに競合ファンドを意識したものでしょう。先ごろ、楽天投信投資顧問がバンガードのETFに投資する「楽天・新興国株式インデックス・ファンド」(運用管理費は税込0.2696%程度)を設定し、さらにSBIアセットマネジメントも海外ETFに投資する「EXE-iつみたて新興国株式ファンド」(運用管理費は税込0.1948%程度)を新規設定するという情報があります。「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」の信託報酬引き下げは、明らかにこれら新商品に対抗するためのものでしょう。

今回の信託報酬引き下げで分かったことは、「eMAXIS Slim」として海外ETFを使った低コストパッシブファンドに対しても真正面から低コスト競争を挑むという意志です。コンセプトである「業界最低水準の低コストをめざす」という言葉に偽りはなく、それどころか海外ETFを活用したファンド・オブ・ファンズに対してもガチンコで低コスト競争を挑むというわけですから、まったく驚きです。

今回の動きは、ある意味で「eMAXIS Slim」という商品の特異さも浮き彫りにしたような気がします。通常、インデックスファンドやETFの信託報酬引き下げというのは、純資産残高が成長したことによる運用コストの低下を受益者に還元するために行われるといった考え方が(建前だとしても)あります。ところが「eMAXIS Slim」は、そんなことお構いなし。ただひたすら競合商品に低コスト競争を挑み、消耗戦になることも辞さずに相手を潰しにかかる。

これはプロレスに例えると、平気でブック破りをしてシュートを仕掛けるようなものですから、競合相手からすればたまったものではない。まったくもって恐るべきシューターの登場です。三菱UFJ国際投信は、恐ろしいファンドを登場させたものです。恐らく今後、インデックスファンドの低コスト競争を主導するのは「eMAXIS Slim」でしょう。それは同時に、いまやインデックスファンドの低コスト競争は、それこそ暗黙の了解で横並びのコスト水準が維持されるようなぬるい状態ではなくなったということも言えそう。

ただ、運用会社やインデックスファンドシリーズの戦略の是非はおくとして、個人投資家にとっては素晴らしい商品が登場したことになります。現在、良質な低コストインデックスファンドシリーズは多数ありますが、どれを買うべきか迷ったときは、とりあえず「eMAXIS Slim」を選べば間違いないということになるのではないでしょうか。そして運用会社は今後、ますますガチンコで低コスト競争を戦わなければならなくなった。それによって個人投資家にとっての投資環境は、ますます素晴らしいものになっていくことになる。本当に驚くべき時代に入ろうとしているように感じます。

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